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気楽にいこうよ!たまには寄り道

クッキング・サイクリング・気ままな旅を愛する 2tomu & kassi の気まぐれなブログ

低体温症に関して

   

先日の北海道において悪天候での登山者の大量遭難事故が起こりました。
その中で盛んに低体温症という言葉がでてきました。
私も学生時代から長く山登りをしてきましたので他人事とは言え、過去の経験からこの低体温症について今日は記してみたいと思います。

☆沢登り

1997年8月 北アルプス・黒部川 上ノ廊下遡行の記録から抜粋

低体温症に関して

いくら8月上旬とはいえ、上ノ廊下はとにかく水量の多さもさることながら、水の冷たさもすごかった。上流に雪渓のある沢や標高の高いところは盛夏でも10℃以下、秋口には0℃近くにもなるらしいのです。そんな中で私は今回、ロ元ノタル沢手前の懸垂下降で危険な状態になりました。ザイルの末端が流れに引っ張られていたところで、着地時にザイルに胸からのホイッスルの細引きが絡まり、懸垂が解除できぬままザックもろともザイルに吊られた状態で流れに押し流されました。しばらく水の中でもがくものの懸垂が解除できないのでこの場から動けません。

低体温症に関して
ちなみに懸垂下降ってのはこういうのです↑レスキュー隊などでみたことありますね。(これは沢でなく岩場ですが・・・)

冷静に行動できればなんていうことはなかったのかも知れませんが、とにかくザイルに吊られた状態で水に押し流されて体が水の流れの抵抗を受けている状態。冷たい水に翻弄されているうちに自分でもみるみる体力が奪われていくのを感じ、腕にも力が入らなくなっていきます。「こうやって徐々に体から力が抜けていって、気を失ってしまうんだろうか?」
「楽な状態って、ひょっとしてこのまま死んでしまうこと?」なんて考えが一瞬のうちに脳裏をかすめました。
「そうはいくかっ!」
最後の力をふりしぼって必死にザイルを頼りに立ち上がり膝の立つところで解除できましたがそれまでの時間の長かったこと。

河原へ上がると呼吸が異常に荒く、体は相当に震え、傍らの石の上でしばらく動けない状態で回復に時間を要しました。上記の懸垂の失敗により、回復に相当の時間を要してしまい、この日はすぐこの後の大淵で行き詰まり、高巻くか泳ぐかでまず悩む。この淵は出口が見えずとても泳ぐ自身がない。両岸に流れがぶつかりこのザックの大きさではヘツリによる突破も無理だろう。高巻もできなくてどうしようもない場合に最終の手段で泳ぐ道をとることにしておく。高巻は左岸にあるらしいのだが雪渓の後退した草付きにそれらしき踏み跡もなく、重荷にはこの登りはきつく、脆い岩場を登ったところで進退極まってしまい、仕方なく懸垂で河原に下りる。もう時間もない。今日は雪渓のすぐ横でビバークとなる。午後は100メートルも進めずに終わる。高巻はできるのだろうか。不安なまま夜を迎えた。反省としてはザイルの処理が悪かったこと。後のパーティは懸垂せずに手前の淵を徒渉していたので、ルートもよく考えればここで危険な状態から停滞することもなかったと思いました。



低体温症は自分の中にははっきりいってまるで知識がなく、あとから書物にて認識しています。雪崩による埋没に関する記述によると、人間の体温が35℃以下になった場合に症状が起き、32℃以下で過換気による溺死や血液中の二酸化炭素濃度の減少による意識障害や筋肉や神経の機能低下。26℃以下ではショックによる心臓の停止などと書いてあり、今更ながら怖さを感じております.沢登りにおいては特に長時間水に漬かりすぎた場合に体温が直線的に低下しこの症状に陥りやすいが、皮下脂肪の多少によって差があるらしく(太っている人が有利)、対策としてウエットスーツやライフジャケツトが有効らしいので水に漬かることが多い沢や、秋にかけての防寒対策は必須です。

以下に続きます。


☆雪山(雪崩)

冬季雪上訓練 谷川岳

低体温症に関して

雪崩による埋没に関していえば、雪上訓練において実際に雪の中に埋めてもらいビーコンで探索してもらうということを経験しました。

低体温症に関して

これは非常にコワいです。わずか数十センチとはいえ雪の中に埋まってしまうとものすごい圧迫感です。頭上を動く人々(探索している人々)の話し声は聞こえますが自分から発する声は全て雪に吸収されてしまい、無駄に大声をだすと体力を消耗するばかりです。
そして何よりも全面が雪に覆われていると体温は急激に奪われていきます。

訓練のひとつとして経験はしたのですが谷川岳から帰ってきて直ぐに風邪をひいてしまうことになったのは事実です。

☆夏山

北アルプス・剣岳 源次郎尾根(バリエーションルート)

今回の北海道のケースは激しい雨と風により極端に低下した体感温度のもとでの長時間の行動が引き金になったものと思います。
風は極端に体温を奪いますし、それが濡れている状態ならなおさらでしょう。
本州と違い、北海道では高度の違いこそあれ北アルプスの2500~3000メートル級の山岳の稜線上で風に吹かれたことを考えれば十分かと思います。
夏と言っても夜間と日中では極端な温度差があるし、低気圧の通過などにより温度が下がればそれこそ氷点下近くまでなんてのも当然の話でしょう。
私も北アルプスの剣岳の稜線直下の壊れかけた非難小屋で8月にビバークしたことがありますが、ツエルトを被った状態でも日が沈んでから朝が来るまでは寒さでほとんど一睡もできない長い夜も経験しました。

低体温症に関して

最悪の状況を想定して装備を十分に持つといっても限界はありますが、せめて最低の防寒対策と安全に対する配慮は十分すぎて困ることはないでしょう。

低体温症に関して

大自然の中においては人間はもはやこの空間における構成要素の一つに過ぎず、自分自身の意志よりも自然の摂理のほうが圧倒的に有利であり、自然に対しては畏敬の念さえ感じ、人間はこの場には不要なもののような気がしてきます。




タグ :低体温症

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